映画『鈴木先生』舞台挨拶@新宿角川シネマ 〜今必要とされる教師ドラマ〜 by パン友

こんばんわ。
新年明けて暫く経ちましたが、皆さん如何お過ごしでしょうか、パン友です。


さて、色々書き残したまま年を越してしまった当ブログですが、今日はそれらのことを一端忘れて(ぇ、本日観てきた映画についてレビューしていきます。


ツイッター上ではフォロワーさんとの温度差を感じながらも、空気を読むことなくこの話題にはちらほら触れていたのですが、そうです。


映画『鈴木先生』について。


この作品は武富健治による同名漫画『鈴木先生』が原作で、昨年TVドラマ化されるも、低視聴率のためあまり話題に上がることのなかった作品なのですが、一部の熱狂的なファンの声もあり、この度劇場公開まで漕ぎつけた、かなり特殊な映画でもあります。


原作コミックはこちら。

鈴木先生 (1) (ACTION COMICS)

鈴木先生 (1) (ACTION COMICS)

鈴木先生(11) (アクションコミックス)

鈴木先生(11) (アクションコミックス)


私自身が熱狂的な漫画好きにして、現在教育で食っている立場からもこういった内容の作品に手を出すことは自然な流れではあったのですが、万人向けで勧められるかというと、少し考えてしまいます。
決してつまらなくはないのですが、タッチがかなり荒く、作中の文字数も他の漫画類と比べかなり多く、人によっては読みづらい漫画であると言わざるを得ません。


では何故、今回映画化に至るまでファンの支持を得続けることができたのか。
それはそれだけ現在の教育に対する疑問を持ち、また学校内の人間関係について未だ思う処がある人が多いからだと思います。
よく「今時の子供は〜」などと否定的に語りたがる大人を見受けますが、実際には子どもの内面的実態などは昔と殆ど変わらないはずです。この作品についても然り、現代の子どもと共通した心理があると思うわけです。
そして少し古臭い作風なのも相成り、意外と共感できる大人が多かったための成功であると、個人的に推察します。


私も学校で今の子ども達と触れあう中で、様々な共感を得ることが多いわけですが、最近は所謂“今時の子ども”の方が却ってシンプルで純なような気さえしてくることが多いです。(それが良いか悪いかは置いておいて…
嫌なことはいや、好きなことは熱中するなど、自分の気持ちに素直な子どもが多いと感じるのは、私の周りだけのことなのでしょうか。
ただし、そんな風に見えるだけで、勿論彼らには彼らなりの不安や生きずらさというのがあるわけで・・・


そんな心のモヤモヤをこの『鈴木先生』に登場する生徒が代わりに吐き出してくれる点に、我々大人は注目せざるを得ないのです。


前置きが長くなりましたが、さっさと本題へ向かいます。
まずは本日10時より、新宿の角川シネマにて行われた舞台挨拶の内容から抜粋したレビューから。



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拍手の中、テレビ東京秋元玲奈アナウンサーが司会として舞台に登場。
早速出演者達を招き上げる。

出演者は以下。(敬称略。舞台向かって並び順そのまま)


秋元アナ、武富健治(原作者)、風間俊介(勝野ユウジ役)、土屋太鳳(小川蘇美役)、長谷川博己鈴木先生役)、臼田あさ美(鈴木の妻・秦麻美役)、河合勇人監督


各自自己紹介から始まったわけだが、とりわけ印象的だったのが小川役の土屋さんがその役の思い入れの強さ故か、突然泣き出してしまったところ。
それだけこの役にかける思いの強さにこちらも心が打たれてしまった。
その後慌てて取り繕い、こんな挨拶をしてくれた。
―『こんにちわ。小川蘇美です。よろしくお願いします』(原作より引用。”キッチリと品行方正な正しい挨拶”)


くぅう〜〜・・・堪らないぜっ…!!


原作者の武富先生はこの映画の製作を見守っている間より、見終えた観客を前にする今の方が緊張しているとのことだった。感情戻りってやつらしい。


また河合監督曰く、今作でラストになるとのことらしく、その分気合入れて制作したと話していた。
うん、意気込み十分すね!


その後長谷川さんに話が振られるも、クールな彼は華麗にそれをスルー(笑)
「感想のある方います??」と逆に観客へ質問しだす始末。
いやはやその辺も面白い。


ここで受け答えを行った観客の方は「鈴木学級の一員になれたようで嬉しかったです」とコメント。
これには長谷川さんも喜んでいたようだった。


また麻美役の臼田さんは今回演じる中での拘りについて、「冒頭のカマの持ち方です(笑)」と一言。
…うん、鬼気迫ってましたよ・・・(笑)
「それからその辺も載ってるパンフも是非!」って宣伝に対し、すかざす風間さんから「あっ、700円です!」とフォローされていたのは笑った。その後何度か商品紹介にて値段を注釈していたのだが、なんともまぁ良くできた役者さんだこと…(苦笑)


再度土屋さん。
今回は学校の屋上からの飛び込みのシーンに対してはとてつもない意気込みで臨んでいたようだ。
また「(鈴木先生の)妄想でも何でもこい!って思ってやってました(笑)」とのお話も。
これ聴いて(女優さんってすごいなぁ。。)と改めて思ったよ!


風間さん。
「ユウジは良い奴!アレは元々の狂気というより、度重なる鬱屈の転嫁」であると役処を説明(フォロー?)。
自分でもがきながらの演技であったとのことで、確かにその力強さに圧倒されっぱなしだったのを思い返した。


武富先生。
「実は僕も出ていたんですがね…」のお話に観客騒然…。
これは私も全然気づかなかったのですが、「まぁ何度か観て確認していただければと…」との売り込みみ一同爆笑。
なるほど(笑)


河合監督。
「生徒一人一人を観て欲しい。それだったらやっぱり一回では無理ですよね(笑)」
…ホント、マジ何回観れば良いのかと…(苦笑)


エンディング。
最後に長谷川さんからはこんなコメント。
「ファンの熱望により今回劇場公開まで漕ぎつけました!みなさんは共犯者です!!」


熱い、熱すぎるぜ鈴木先生よ〜〜・・・・・・!!!


河合監督。
「一人でも多くの方に観ていただきたい。(中略)この映画が許容される社会が良い社会ではないかと思っています」


なるほど。確かにこういう普段日常の中で語りづらいことを作品に散らばめていたのは、そういうことだったのかと理解。




…以上、約20分程度の内容であったが、素晴らしい会であった。大満足。

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なお舞台挨拶自体は映画本編上映後だったのもあり、始終和やかな雰囲気の中執り行われた。
肝心の映画の内容についてはここではあまり詳しく記すことはしないでおくが、とても面白い内容だった。



※注意。こっから一部ネタバレ有マス!
一応簡単に説明しておくと、本作は一応劇場版ではあるものの、話の流れとしてはドラマの続き(11話)という扱い。

鈴木先生 完全版 DVD-BOX

鈴木先生 完全版 DVD-BOX

ドラマ版はやはりこのOPが印象的でしたね。(映画でもあります!


コミックス的には8巻〜11巻を中心とした物語構成となっており、映画で初でも楽しめる構成ではあったものの、やはりある程度の事前知識があった方が良いかも。(というか、それがないと映画冒頭の鈴木先生による妄想シーンはただの変態教師にしか見えないかもしれません…いやね、別に擁護するわけじゃないけど、教師だってただの人間であるからしてやはり多少はゴニョゴニョ…(ry



詳しい内容はアマゾンのコミックスの紹介ページが参考になるかと。


(8巻)怨霊足子先生の呪詛に、聖職者鈴木は蝕まれる!?
かつてこのような腑抜けな鈴木先生を読者は見たことがあるだろうか!?
本巻では、鈴木先生と足子先生の暗闘を描いた「足子…その後に」編、生徒たちの思惑・野望が飛びかう「生徒会選挙!!」編


(9巻)白熱する生徒会選挙。経験に長けた南條。
2年A組の姉御、中村。ジレンマに苦悶中の神田。
ひそかに牙を磨ぐ西…。いったい生徒会長の座は誰が…!?


(10巻)文化祭の「ひかりごけ」公演に向けて、準備に入った鈴木先生率いる2-Aの面々。
また、「リア王」を上演する2-Cと、初のオリジナル劇「神の娘」に挑戦する演劇部も、稽古をスタートしていた。
しかし、緋桜山中学校近所の公園で稽古に入った演劇部を出迎えたのは、そこにたむろしているオジサンとキモい男たちの冷たい視線だった。
公園での舞台稽古が思わぬ波乱を呼ぶことになるが…!?


(11巻)ミツルの逮捕を受け、どんどん精神の暗黒面にはまっていってしまう勝野ユウジ…
一方、緋桜山中学の面々の演劇勝負もさらにエスカレートし、文化祭での披露に向けての猛練習が続いていた。
そしてついに、文化祭を目前に控え、ユウジが行動を開始する。
緋桜山中学へ武装して侵入し、小川蘇美を人質にとるユウジ。
彼の凶行を止めることはできるのか…感動と興奮のエンディングが待つ。

…うーん、原作でも圧倒的な情報量だっただけに、生徒回選挙、文化祭、そして人質事件といったイベントを並列化して描き切った監督の構成力は凄まじいと感じる。


それだけ濃い内容だったのにも関わらず、破たんせずに纏めるのってとても難しいはず。
よく原作レイプなんて言葉を目にするが、尺の都合上原作のある部分を削除しなければならないのは仕方のないことだと思う。
ある意味、原作をそのまま映像化する以上に深い読み込みが必要になってくる場合もあるわけで。
この映画でもやはり抜け落ちていたシーンはあったのだが、それほど違和感なく見終えることができたのは個人的には高く評価できるのではないかと。(特に文化祭準備のシーンはかなり減っていましたが…



役者については文句なし。
子ども達も上手いが、それも熟成しきった大人の演技によるものではなく、ナマで青臭い部分を残した演技が逆に胸を打つ。
特に鈴木に対し辛辣な言葉を投げかけた神田(工藤綾乃)と、今の選挙システムに対する批判的意見を言い放った出水(北村匠海)、藤山(桑代貴明)、そして勿論、思想犯に対し自らの強い信念と鈴木への信頼で対抗した小川(土屋太鳳)役の子役達はずば抜けて良かった。


こうして普段から教員としてリアルな子ども達と接している大人としては言うべきことではないかもしれないが、やはり「こんな子ども達に会ってみたい」と、マジに思ってしまうわけで・・・



あとはまぁ、ユウジ役の風間さんですよね。
ホントよく出てくれたよ!!
金八が私的に一番面白かったときに主演していたのがこの風間君であり、正に直撃世代だったためもう毎週夢中で見ていました。
彼の演技って、素の部分から“超”へと解放されるその落差が凄まじいパワーに溢れているように感じます。
NHKの『純と愛』も観ましたが、こういった内面葛藤を表現するキャラクターを演じたら、少なくとも同年代では類を見ないのではないかと。


今回もやってくれます、魅せてくれます。
ぶっちゃけ今回は社会的にはかなりアウトな人物を演じているのですが、それでも憎めない、というか完全に共感できてしまえたあたり、彼の演じたユウジが自分に近い思想に基づいたキャラなのかなーと。
というか、このユウジという青年は個人的に絶対に嫌いにはなれず、それどころか好感すら持ててしまいました。
それだけ反骨精神に溢れた若者というのを、心の奥底では求めてしまっているのかもしれません。(また自分の理想形としても
まぁやはり危険であることには変わらないわけですが。。

(参考)

教室内(スクール)カースト (光文社新書)

教室内(スクール)カースト (光文社新書)

この辺りでユウジの中学生時代における“自分の役柄”についての葛藤を描いていましたが、なんとなく最近読んだこの本を思い出しました。
子どもの時一度沁み付いた役柄から抜け出るのは中々にして難しく、場合によっては自己否定に陥る危険性もあるため、注意が必要だったりします。
…まぁ宜しければ読んでみて下さい。

そしてそんな役をあの風間君が演ってくるとなりゃあ・・・
女子じゃないけど、舞台挨拶中に「「きゃー!風間きゅーーーーん☆」」とか叫びだしそうになったりもしました(オイ


鈴木先生役の長谷川さんに関しましては、、もうなんつーか全て好きっす(笑)
家政婦のミタ』で演じたヘタレなお父さん役もハマってけど、この鈴木先生に関してはこの方しかいません!って感じ。
眼の前で“鈴木式教育メソッド”なんかやられたら、そりゃ影響受けるに決まってますわ。。


他キャストでは、桃井先生役の田畑さん(NHKの連ドラ好きでした)、川野先生役のでんでんさん、そして鬼気迫りまくりのある意味熱血教師、足子先生を演じた富田さんあたりは凄い好き。
ドラマ版で山崎センセを演じたグッさんもそうだけど、ホント役者に恵まれているなぁ、と。。




……。
まぁというわけで色々語ってきましたが、この映画は凄く面白いと、ただそれだけを伝えたかったわけです。
教育に興味がある人以外でも、子どもの頃に抱えていたモヤモヤが未だ残ってしまっている大人の方なども愉しめるのではないでしょうか。(勿論リアル世代な子ども達も



なお映画自体はこれで終わりですが、原作の方ではこの事件の後日談についても描かれていますので、興味を持たれた方はそちらもおススメ。

鈴木先生外典 (アクションコミックス)

鈴木先生外典 (アクションコミックス)


武富先生の作品は他にもいくつかでています。
個人的にはどれも傑作揃いだと思っているので是非是非。

掃除当番―武富健治作品集

掃除当番―武富健治作品集

狐筋の一族 武富健治実話作品集 (ミリオンコミックス)

狐筋の一族 武富健治実話作品集 (ミリオンコミックス)



ふぅ。。
なんとか一つ書いたけど、映画はあとエヴァレ・ミゼラブルをもう一回観たい。。
それから既に酷評されているHUNTER×HUNTERはどうすっか…でも0巻。。
うぅ。。。。。。(以下ループ乙↓↓