コミ☆らぶ!  シナリオ/左頭 友


目覚めると、そこは一面白銀に覆われた世界だった。
なんだ、ここは……


―ここはね、今のあなたが持っている世界よ

それは透き通った、少年とも少女とも取れる歌うような声であった。
ここが……


―そう、この何もない一面全てがあなただけの世界。


こんなに綺麗なものなんだな、俺の世界って……ははっ、捨てたもんじゃねぇじゃねぇか……
我ながら捻くれているな、と思いつつもそう呟かずにはいられなかった。


―そうだね。でもここには、何もない……
まぁな、確かに、少し寂しいかな……


―なら、願ってみればいいんじゃない?
願う?何を?


―あなたの望む、あなただけの世界を、よ……



遠くから声が聞こえる。やけに煩い、女の声だ。
先ほどの優しい声とは違う、でも安心する声。


「「いい加減早く起きなさいよ〜〜!
早く起きないと、あんたの朝ご飯あたしが全部たべちゃうんだから!」」


女が俺の耳元でやかましい。たまらなくなって俺はベットから抜け出る。
「ちっ、うっせーな朝から!何なんだよお前は!」
「はぁ!?何だとはなによ!あんたねぇ、こーんな可愛い幼馴染に起こされて、なーにが
不満だってのよ!なんてったってクラスのアイドル、このむ〜たん☆が起こし
にきてやってんのよ!感謝しなさいよね!」


へいへい、と適当に返事を返すと頭に何か投げつけらた。
「っつ…ってーな!なにすんだよ!」


そう文句を言いつつ、それを広いあげるとカロリーメイト(あずきバナナ味 だった。
「…なんだこれ」
「何ってあんたの朝食よっ!ふんっ、感謝しなさいよねっ!」
…そういやこいつ、料理とかからっきしだったな……
「ったくお前は…。つか俺昨日全然寝てなくて眠いんだよ……もう少し、寝かせてく」
「はぁ?この大事な日になんで寝てないのよ!ほんっっっと、バッカじゃないのっ!!」
そういってプリプり怒るむ〜たん☆
だかしばらくすると本気で心配そうな顔になる。
「…それで、本当に大丈夫なの?」
なんだかんだ言って気にかけてくれる幼なじみに、途端に照れくさくなる俺。
「あっ、いや、まぁなんとかなるだろよ。うん…
それに普通に学校行くだけだしな。うん。授業中寝てれば良いしさ、よゆーよゆー…」
そうお茶らけてみせると、更にに顔をかげらせる幼馴染。


「…あんた何行ってんの?学校ってなんのこと?」


あ、れ…頭が急にグラグラする。なんだ?
「何って…いや、だから学校だろ?あれ、それともデートだったか?」
すかさずボケをかましてみるが、反応が返ってこない。あれ、俺はずしちゃった?
「…あんた本当に大丈夫!?なんか悪い夢でも見たんじゃないの?
いい?これから私たちが行くのは……、」


…頭痛が酷い。これはヤバい。これはヤバいと脳が直接訴えてくる。ふと視界の端が目覚まし時計を捉える。4時…半?なんでそんな時間に学校へ!?てか、俺寝てないのに、さっき夢を見ていたような……


そこにいるはずの幼馴染に再度目を向ける。
が、目の前にいたはずの、少女はそこにいなかった。
そこには男が一人立っている。
いや、違う。


ソレは男に変化していた。
薄れゆく世界の中で、男の顔になったむったん☆は確かに、こう呟いた。


―これから向かうのはさ、戦場だよ。